抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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c-di-GMP[cyclic di-(3′:5′)-guanosine monophosphate]は原核生物の主要なシグナル伝達分子で,ジグアニル酸シクラーゼによって合成され,無柄性とバイオフィルム形成を引き起こす。我々は,初めての真核生物ジグアニル酸シクラーゼを,タマホコリカビ類のすべての主要分類群で検出した。餌が欠乏すると,キイロタマホコリカビ(Dictyostelium discoideum)のアメーバは集まって,最初は移動性を持つナメクジのような集合体を作り,次に無柄の子実体構造へと形を変える。このような構造は,球形の胞子塊と,それを支える柄細胞からなる円柱,および円盤状の基部で構成される。ポリケチドの1つで以前に単離されたDIF-1は,in vitroで柄に似た細胞を誘導する。だが最近になって,そのin vivoでの役割は,基部円盤の形成に限定されていることが明らかにされている。今回我々は,キイロタマホコリカビのジグアニル酸シクラーゼDgcAがc-di-GMPを産生し,これが柄細胞の分化を引き起こすモルフォゲンとして働くことを明らかにする。キイロタマホコリカビのDgcAによるc-di-GMPの合成はGTPに依存して起こり,またDgcAは,ナメクジ状の集合体の先端部,すなわち柄細胞の分化が起こる部位で発現されていた。DgcA遺伝子を破壊すると,ナメクジ状の移動体から子実体への転換と柄の遺伝子の発現が遮断された。DgcAヌルの移動体を野生型の分泌物やc-di-GMPにさらすと,子実体形成と柄の形成が再び起こるようになった。希釈して単層培養した細胞にc-di-GMPを加えると柄の遺伝子の発現が誘導されたが,c-di-AMP[cyclic di-(3′:5′)-adenosine monophosphate]では誘導されなかった。この研究によって,長い間見つからなかった柄誘導モルフォゲンが同定されただけでなく,真核生物でのc-di-GMPの役割も明らかにされた。Copyright Nature Publishing Group 2012