抄録/ポイント:
抄録/ポイント
文献の概要を数百字程度の日本語でまとめたものです。
部分表示の続きは、JDreamⅢ(有料)でご覧頂けます。
J-GLOBALでは書誌(タイトル、著者名等)登載から半年以上経過後に表示されますが、医療系文献の場合はMyJ-GLOBALでのログインが必要です。
チャの放射性物質による汚染に関する内外の関連文献を紹介し,過去の知見を整理した。日本国内で行われた茶と放射性物質に関する研究は,1950~60年代に植物の外部形態の差異による汚染の違いや茶の生葉洗浄による放射能低減効果についての研究が行われた。海外における茶の放射性セシウム汚染に関する研究としては,インドにおいて核実験の降下物による茶葉中の放射性セシウム含量の変化の研究や1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故による放射性セシウムの影響に関して約1300km離れた黒海周辺のトルコの茶産地において詳細な研究が行われた。日本においても,チェルノブイリ原発事故前後の緑茶中のセシウム137濃度が調査されており,事故直後急激に上昇し,翌年には1/10以下に減少したとの報告がある。今回の福島第一原発事故を受け,2011年6月30日までに公表された,荒茶の放射性セシウム濃度の最大値は3000Bq/kgである。また,多くの県で数百Bq/kgの濃度が報告された。年間に放射性セシウム濃度が500Bq/kgの緑茶を1000杯飲むと仮定すると,我々が1年間に食品から受ける実効線量(平均値300μSv)が約8%増加し,環境から受ける全実効線量(平均値2400μSv)が約1%増加する計算になる。また,今回問題となった新芽の放射性セシウムによる汚染は,主にチャの葉面から吸収されて樹体内に取り込まれた放射性セシウムが新芽へ転流したことによるもので,土壌からの経根吸収の寄与は小さいと考えられた。今後も今回の事故に伴う茶園における放射性セシウムの動態や有効な対策技術を発信し続けることが重要であると思われた。