抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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がんの転移性進行は複雑で,臨床的に困難な過程である。我々は以前に,乳がんの肺および骨への転移をロバストに抑制し,その発現量によってヒトの転移を予測できる一群のヒトマイクロRNA(miRNA)を同定している。これらの知見より,miRNAが細胞自律的転移表現型の抑制因子であることが明らかにされたが,非細胞自律的ながん進行過程に非コードRNAが果たす役割は,依然として不明である。今回我々は,ヒトで一般的に見られるさまざまながんでサイレンシングされているmiRNAである内在性miR-126が,in vitroおよびin vivoで,転移乳がん細胞への内皮細胞の動員を非細胞自律的に制御することを明らかにする。miR-126は,ヒトでの転移の新しい血管新生促進遺伝子およびバイオマーカーであるIGFBP2,PITPNC1およびMERTKの協調的ターゲティングを介して,転移性の内皮動員,転移性の血管新生ならびに転移性の定着を抑制する。転移細胞によって分泌されるインスリン様増殖因子結合タンパク質2(IGFBP2)は,IGF1を介して内皮細胞上のIGF-I受容体の活性化を調節することにより,内皮を動員する。一方,転移細胞から切断されたc-Merチロシンキナーゼ(MERTK)受容体は,そのリガンドであるGAS6の内皮MERTK受容体への結合を競争的に拮抗することによって,内皮動員を促進する。内皮細胞と乳がん細胞の同時注入で,miR-126によって誘導された転移能喪失が非細胞自律的に救済され,これは内皮との相互作用が転移開始にこれまで未知の重要な役割を果たしていることを示している。機能喪失実験およびエピスタシス実験から,miRNA調節ネットワーク内の各成分が,内皮動員,血管新生および転移細胞定着における新規細胞外調節因子であることが示された。また,IGFBP2/IGF1/IGF1RおよびGAS6/MERTKシグナル伝達経路が,がんが仲介する内皮動員の調節因子であることを突き止めた。さらに今回の研究は,内皮動員および腫瘍微小環境における内皮の相互作用は,転移性乳がんの重大な特徴であることを明らかにしている。Copyright Nature Publishing Group 2012