抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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本論文では,リスト手話で提示された緊急通報をろう者が読み取るプロセスを相互補完性の観点から分析・評価することによって,ろう者がリスト手話に高い評価を与える要因を明らかにした。具体的には,ろう者によるリスト手話の読取りプロセスにおいて,二つの言語間でどのような相互補完性が見られるのか,また,相互補完性はろう者がリスト手話を読み取る際のストラテジーとどのように関係するのかについて12名のろう者(20~45歳)の視線計測に基づく評価を行った。実験の結果,メッセージ読取りの進行に伴う注視領域の変化から,特にJSL優勢型及びJT優勢型のろう者で,長文手話においては手話及び日本語のどちらを注視するかという注視領域の推移パターンが収束せずばらつきが大きいが,リスト手話においてはろう者間で共通の注視配分パターンに収束し,かつ,安定していることが明らかとなった。また,停留時間分析から,特にJSL優勢型のろう者のメッセージ読取りは,リスト手話及び長文手話の双方において,自然な手話読みを行いながら必要に応じて日本語テキストも読み取り,かつ,手話領域の一瞥によって手話と日本語の読みの同期をとる,相互補完的な読み方が行われることが明らかとなった。更に,リスト手話は長文手話よりも手話と日本語との見比べが容易で二言語間の相互補完性を積極的に利用しやすいため,読取りの終盤において手話と日本語との見比べ数も増大することが示唆された。このように,例えば,地名や鉄道用語など,ろう者にとって難解な語が通報に含まれる場合,その語を見返したり,二言語を比較して内容理解を補足する等,必要な情報のみを相補的かつ選択的に取得できる感覚が,ろう者がリスト手話を読み取る際の心理的な時間を短縮し,通報の受容性を高めたと考えられる。(著者抄録)