抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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「有機農業のグローバル開発:課題と展望」は,2006年にN. HalbergらによりCABIから出版された。この本は,2004年にデンマークのコペンハーゲンで開催された「有機農法におけるグローバルな展望-国際化,持続可能な発展および環境正義」と題する国際ワークショップの成果をまとめた本である。最新の農業食料システムは,有機農業も含めて技術的構造的に近代化し,増大するグローバル化に直面している。有機農業は,先進諸国および発展途上国どちらにおいても拡大傾向にあるが,農業技術の発展している豊かな資金を持つ国々と資金の少ない小規模農業が行われている国々では,有機農業に対する課題に大きな違いがある。この著書は,世界の有機農業を取り巻く諸問題の中で「持続性,食の安全性,フェアートレイド」の展望に焦点を当てて述べている。現在,有機農法は,約100か国で実施され,有機農産物が,ブラジル,エジプト,ウガンダなどの発展途上国からヨーロッパや北アメリカなどへ輸出されている。輸出の増大は,発展途上国において良い展望ではあるが,同時に有機農法の根幹を危うくする要素も持ち合わせている。その例として,ウガンダでは,有機フルーツに関してデンマークの市場とフェアートレイド協定を締結した会社との間で種々の問題が生じたと述べている。また,都市で生じた廃棄物の再利用に関して,中国,インド,ボツワナ,南アフリカ,マレーシア,オーストラリア,スウェーデンおよびノルウェーの各国に即した費用対効果技術に関して列挙している。このことは,他の発展途上国の良い手本となると思われる。有機農法は,主流農業とは一線を画しているが,グローバル化の混沌の影響と無関係ではない。この著書は,我々に有機農業の多面性を教えてくれ,さらに,固有の自然,社会性,環境,政治的背景を持った広大な地域に当てはまる唯一の実際的な解決策はあり得ないと気づかせてくれる。したがって,あらゆる可能性に耐えうる手法を見出すためには,研究が最優先されるべきであると述べている。