抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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生体で働く分子機械の中で,キネシンは最も重要なリニアモータ系タンパク質であり,細胞内で微小管のレールに沿ってナノサイズの物質を輸送している。もし,このようなモータタンパク質の人工的な制御・利用が実現できれば,ナノテクノロジーの新しい領域を開拓することになるであろう。そのために,キネシンの人工的な運動制御に関して望まれることは,望みのタイミング,望まれる場所でその働きをON/OFFスイッチすることである。本研究では,キネシンが働く基板表面,もしくはATPへ光応答性のアゾベンゼン基を導入することにより,キネシンが行う運動機能を動的に繰り返し光制御できることを示した。理想的には,ON状態では,通常のキネシン-微小管-ATPの系と変わらない運動速度が得られ,OFFの状態では運動を完全に止めることが望まれるが,そこまでには至っていない。また,本系を微小管以外のナノ物質の移動に応用することを考えた場合,微小管とナノ物質を可逆的に結合する必要もある。これらが実現できれば,光を望まれる流路のパターン状に与えることで,物質を望みの場所に運ぶことができ,また,次の瞬間に流路を変化させることも可能であろう。まだまだ解決しなければならない課題は多いが,今回の成果は,生体の分子機械を利用してナノメートルサイズの物質を高い時空間空間分解能で取り扱う,新たなナノテクノロジーヘの応用の第一歩として期待できる。