抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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アメリカにおける1934年の証券取引法に基づく法定監査の開始から約80年以上の歳月が過ぎている。しかし,21世紀を迎えても,粉飾決算の事例は後を絶たない。監査の失敗を生起させる最大の要因は,組織的・効率的監査の達成を阻害する独立性の欠如にある。ここに,監査事務所における独立性の確保と品質管理を中心とした組織ガバナンス,ならびに監査環境・制度の改革それ自体にも焦点をあてる研究の拡大が必要とされたのである。このような認識のもと,著者らの研究グループは,「監査人の独立性確保のための組織ガバナンスと制度改革に関する理論的・国際的研究」を進めてきた。最近の論稿である「有限責任監査法人制度の現状と課題」では,その結論として,「監査に関わるステークホルダーにとっては,有限責任監査法人か無限責任監査法人か,あるいは監査法人か共同監査かといった2者ないし3者択一ではなく,監査目的を同じくする監査,例えば金融商品取引法監査についてはいずれの主体が監査を実施しようが同等の結果を生じさせることのできる環境整備が必要であること,換言すれば,組織ガバナンスにおいても組織内情報の作成・開示においても,同等の規制をいずれの監査主体にも適用することが重要であることを指摘した。本稿では,これまでの研究をさらに進めて,監査の信頼性を高めるために不可欠な監査業務の品質管理に焦点を合わせ,監査主体である監査事務所,公認会計士の自主規制機関である日本公認会計士協会,ならびに,公的規制機関としての公認会計士・監査審査会の3つを取り上げ,品質管理制度の現状と問題点を明らかにすることを目指した。そして,現在の監査制度のもとでは,企業会計審議会が監査基準や品質管理基準などを通じて監査制度の規範ならびに基本的事項を規定し,これらの基準の適用にあたっては,日本公認会計士協会が実務指針を提供すると言う階層的構造でもって当該の目的を達成するように志向されていることを示した。しかし,基準や実務指針が実務において実際に効果を発現しているか否かは必ずしも明確に認識されているわけではない。実際に,監査の品質管理についても,相変わらず監査の失敗が続いていることからも明らかである。基準・実務指針などの規程と現実とのギャップを埋めるためには,常に実務の現状を調査し,規程が現状に適合するように,不断の改訂を加えていく必要があろう。