抄録/ポイント:
抄録/ポイント
文献の概要を数百字程度の日本語でまとめたものです。
部分表示の続きは、JDreamⅢ(有料)でご覧頂けます。
J-GLOBALでは書誌(タイトル、著者名等)登載から半年以上経過後に表示されますが、医療系文献の場合はMyJ-GLOBALでのログインが必要です。
本論では,日本の大手IT企業A社のアセスメント・センターで使用された合計6パターンの評価次元設計の妥当性を検証する。A社でのアセスメント・センターは,係長級および課長級への昇格審査プロセスの一環として毎年実施されている。6パターンのうち3つが係長級審査用,残りの3つが課長級審査用に設計・使用されたものであり,それぞれ10年前後の年月を経て,第1世代から第3世代へと改訂が行われてきた。典型的な評価次元体系は,10数個の評価次元が4~5個の上位概念に括られた形で設計されている。本研究では最初に,これらの評価次元セットについて各々因子分析を行い,評価次元のグループ分けを実施した。ここからの第一の所見は,往々にして設計時に意図された次元のグループ分けが,因子分析の結果と符合しないことが多いことである。このことから,次元の上位概念構成の見直し,または評価次元の定義の見直しを行い,実際のアセスメントにおいて個々人の評価の積み上げから得られた括り(=因子分析の結果)に近づけるような再設計の必要性が示唆された。また,第1世代から第3世代へと時系列的に因子分析の結果を評価すると,新しい世代の次元設計の方が次元間の独立性が高まっており,各次元の構成概念が他の次元との弁別力を増していることが確認された。この現象が,次元設計の洗練化によってもたらされたのか,年を経るにつれてアセッサーが各次元をよりよく弁別できるようになったためなのかは,現時点では明らかではない。次元間の独立性が向上してきていること自体,この研究の分析結果を提示するまでA社では認識されていなかった。さらに,最新の次元設計を多次元尺度法およびクラスター分析でカテゴライズした結果では,海外で行われた評価次元のメタ分析から抽出された6~8個の代表的な上位次元と類似した布置があらわれており,標準的・安定的な運用が実現されつつあることが確認された。日本の会社の人事データを用いたアセスメント・センターの実証的な妥当性・信頼性の研究は非常に少ない。今回の分析もA社1社のみの所見であり,本論の結果から日本のアセスメント・センターの運用状況を一般化して論ずることはできない。今後,さらに多くの企業の実データを用いて検証していくことが望まれる。(著者抄録)