抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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近年,組織要因が関与する事故や不祥事が多発しているため,産業界では,安全性を確保するために,「安全文化」を構築しなければならないという認識が拡がって来ている。そのきっかけとなったのは,1986年に発生したチェルノブイリ原発事故であった。それまでは,人間が事故発生の主要発生因であると考えられ,個人レベルのヒューマンエラーをいかに防ぐかということに関心が注がれていた。ところが,チェルノブイリ事故発生の根本には,個人レベルではなく,安全を軽視するという組織の風土が長きにわたって組織の深層に潜んでいたことが明らかにされ,組織の在り方が事故の発生源として焦点となった。その後も,企業の不祥事が相次いで発生したことにより,組織全体の安全に対する態度や行動といった組織風土の重要性が一段と認識され,安全を確保するための組織の風土,つまり安全文化の醸成が強く求められるようになった。ところが,「安全文化」の概念は多くの抽象的なものを内包しているため,これを具体的に展開する方法が見当たらないのが現状である。そこで,本研究では,先行研究で得られた知見から,「安全文化」の構成要素を分析し,それらに基づいて,組織が抱える「安全文化」を具体的に評価する手法(安全文化評価ツール:SCAT)の開発を行った。SCATは,安全文化の構成要素を新たに規定し,これに基づいて,安全確保のための仕組み(体制・手段・活動)として抽出した10分野に対する「組織メンバーの安全態度・安全行動(項目評定)」と「安全態度・安全行動の共有性(層間ギヤツプ)」という2要素を直接的に評価する「安全文化評価ツール」(SCAT)としたものである。また,SCAT-MAPを作成することによって,組織の安全文化レベルを比較検討することも可能なものとした。その結果,各組織を4タイプに分類することによって,安全文化に関する組織の全体的特徴が把握されると共に,組織間の比較も可能となっている。さらに,二つの組織内の各評価分野,各評価項目の結果も,このSCAT-MAP上に表現するならば,より詳細な組織内の脆弱点を検出することも可能となるものである。