抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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モリブデン(Mo)の同位体組成の天然に生じる変動は地球化学のツールとしての可能性を増しつつある。海洋はMoの重要なリザーバーであるが,海水のMoの同位体組成のデータは少ない。Mo同位体比の正確な決定に関する手法を,キレート樹脂を用いた予備濃縮とマルチコレクタ誘導結合プラズマ質量分析(MC-ICP-MS)に基づいて開発した。MC-ICP-MSにより全ての安定Mo同位体が測定できる(Nakagawa他,2008)。本研究では,太平洋,大西洋,南大洋の9ステーションで採取した海水の172試料を分析し,地球全体をカバーして初めての完全な深さプロファイルを得た。平均の同位体組成はδ
A/95Mo(Johnson Matthey Mo標準溶液に対する)で表して,δ
92/95Mo=-2.54±0.16‰(2SD),δ
94/95Mo=-0.73±0.19‰,δ
96/95Mo=0.85±0.07‰,δ
97/95Mo=1.68±0.08‰,δ
98/95Mo=2.48±0.10‰,δ
100/95Mo=4.07±0.18‰であった。このδ値は
AMoの原子量とよい線形相関を示す(R
2=0.999)。Mo同位体の3同位体プロットは直線でフィットされ,その傾きは質量依存同位体分別に対する理論値と一致する。これらの結果は,現在の酸化的な海洋ではMo同位体が均一に分布しており質量依存分別の法則にしたがうことを示す。また,Mo同位体分析により,本研究で用いた標準物質のδ
98/95MoはArcher及びVance(2008)が用いたMo標準物質より0.117±0.009‰軽いことが明らかになった。異なる研究室で測定されるMo同位体組成の正確な比較のために,共通のMo標準物質が緊急に必要である。その一方で,本研究の結果は海水がMo同位体組成の国際的な参照物質となる可能性を強く支持する。(翻訳著者抄録)