抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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中国原産のトウネズミモチLigustrum lucidum Ait.は,植栽地からの逸出によって急速に分布を拡大しており,近縁の在来種に対する遺伝的攪乱の可能性も指摘されている。本研究では,トウネズミモチとネズミモチLigustrum japonicum Thunb.の交配親和性と野外における雑種形成の可能性に着目して,(1)開花フェノロジーの観察,(2)人為的な交配実験,(3)野外集団のAFLP遺伝分析,を実施した。開花フェノロジーの観察と交配実験は,東京農業大学世田谷キャンパスでおこなった。AFLP遺伝分析は世田谷キャンパスのネズミモチ8個体,トウネズミモチ8個体に加えて,複数の調査地から無作為に採取した349個体,計365個体を対象におこなった。ネズミモチとトウネズミモチの開花ピークはおよそ1ケ月ずれていたが,ネズミモチの開花終了からトウネズミモチの開花開始までは2日であった。また,交配の組み合わせや花粉採取時期によって変動はあるものの,交配実験による平均結果率は0.02~0.21であり,少なくとも果実(種子)形成に至るまでの遺伝的な隔離機構は完全ではないことが示された。一方,AFLP遺伝分析の結果,野外集団の全ての個体が純粋なネズミモチもしくはトウネズミモチに区分され,雑種は存在しなかった。これらのことから,両種の雑種形成は,環境条件の違いを反映した開花時期の差異(交配前隔離機構)と,遺伝的要因による種子の発芽,生育阻害(交配後隔離機構)によって抑制されているものと考えられ,現時点では,トウネズミモチによるネズミモチへの遺伝的攪乱が普遍的かつ広範囲で生じている可能性は極めて低いことが示唆された。(著者抄録)