抄録/ポイント:
抄録/ポイント
文献の概要を数百字程度の日本語でまとめたものです。
部分表示の続きは、JDreamⅢ(有料)でご覧頂けます。
J-GLOBALでは書誌(タイトル、著者名等)登載から半年以上経過後に表示されますが、医療系文献の場合はMyJ-GLOBALでのログインが必要です。
2011年3月の福島第一原子力発電所事故を受けて,日本の電力政策を取り巻く環境は劇的に変わった。原発の安全神話が崩壊し,計画停電も経験した。2011年秋から政府は「エネルギー基本計画」の見直しを進めており,脱原発は可能か,再生可能エネルギーの大量導入は現実的か,電力システムはどうあるべきか,活発な議論が続けられている。3.11後の新たな電力政策について,日本はドイツから学ぶべき点が多いというのが,本稿の基本的視座である。3.11後にドイツはいち早く脱原発を表明したが,実は2022年までに全ての原発を廃炉にするという決定を行ったのは,2000年が最初であった。同じ年にドイツはフィードインタリフを開始し,その結果再エネの導入は6.4%から20%(発電量ベース)へと飛躍的に進んだ。そしてこの10年余りは,電力自由化を推進した時期とも合致している。独占を撤廃し,民間企業の発送電分離を進めた結果,市場は内外に開放され,それが分散型電源である再エネの普及にも寄与している。このように,3.11後の日本が真剣に悩んでいる3つの政策転換の全てを,ドイツは10年余り前に決断し,これまでに大きな成果を上げてきた。そして経済規模,技術水準,エネルギー安全保障の状況,電力産業の構造などの観点から,ドイツの10年前の状況は日本の現状と極めて近い。ドイツが成し遂げてきたことの多くは,日本にも応用可能であると考えられる。本稿の結論としての政策提言は,次の通りである。第1に,日本も脱原発を選択することは可能であるし,地域的安全性だけでなく経済性やエネルギー安全保障の観点からも,そうすることが望ましい。第2に,その不可欠な手段が再エネの大量導入であるが,フィードインタリフによる優遇や立地規制の緩和などの手段により,十分に現実的である。第3に,再エネの大量導入のためにも,発送電分離の断行や地域独占の撤廃,卸電力取引市場の活性化といった,本格的な電力自由化が不可欠である。これらの政策が目指すものは,「自律分散型電力システム」への構造改革である。電力の供給を限られた数の電力会社に一任するのではなく,多数の供給者や無数の需要家が様々な形で関与する,市場ベースのシステムへの移行が求められている。とは言え,このような電力政策の抜本改革には強い抵抗が予想され,実現は容易でない。...(著者抄録)