抄録/ポイント:
抄録/ポイント
文献の概要を数百字程度の日本語でまとめたものです。
部分表示の続きは、JDreamⅢ(有料)でご覧頂けます。
J-GLOBALでは書誌(タイトル、著者名等)登載から半年以上経過後に表示されますが、医療系文献の場合はMyJ-GLOBALでのログインが必要です。
IFRS(財務報告基準)を巡る業績尺度として,日本では包括利益が重要視されてきたのに対し,ISAB(国際会計基準審議会),FASB(米国の財務会計基準審議会)両ボードでは当期純利益を廃止して包括利益に1本化しようとする議論がなされた。2011年に公表された両ボードの新基準では包括利益の表示方式として1計算書方式および2計算書方式を認めるとして,当期純利益の重要性を示している。しかし,リサイクリングをしない項目が増えることによって当期純利益そのものが変質してくることが懸念される。また,IASB新基準において当期純利益は包括利益からOCI(その他の包括利益)の項目を除くものとし,OCIは,他のIFRSにより当期純利益に認識されない収益・費用をいうとしている。包括利益の表示に関する会計制度の国際的生成及び変遷過程を検討し,各国における表示制度の特徴を把握した。また,FASBとIASBが共同公表した新基準を比較しつつ課題を把握し,日本の表示基準との関係を検討した。日本では,投資のリスクから解放された利益情報という要件を付加して当期純利益の中身を決めており,リサイクリングについてもIASBよりも明確に整理している。IASBは包括利益や当期純利益という基礎概念の枠組みも整っていないが,包括利益の表示目的はもともと国際会計基準の資産・負債アプローチに依拠し,それは,貸借対照表の公正価値差額が包括利益に対応するという考え方に基づく。日本では包括利益基準適用後も,営業利益や経常利益を業績指標として重視する姿勢が伺えるが,コンバージェンスの進展に伴って,IFRSが日本/世界に受入れ可能な基準となるように基準の開発に参加すべきである。