抄録/ポイント:
抄録/ポイント
文献の概要を数百字程度の日本語でまとめたものです。
部分表示の続きは、JDreamⅢ(有料)でご覧頂けます。
J-GLOBALでは書誌(タイトル、著者名等)登載から半年以上経過後に表示されますが、医療系文献の場合はMyJ-GLOBALでのログインが必要です。
近年,mRNA伸長の初期段階におけるPolIIの停止が広く真核生物の転写制御機構として重要であるという証拠が蓄積しつつある。本総説では,プロモータ近傍でのPolIIの停止と,その解除によるmRNA再伸長開始の制御機構について考察した。:(1)「プロモータ近傍でのPolII停止の発見」1980年代初期までに,転写がmRNA伸長段階で調節されている可能性が示され,その後90年代初期にかけて,プロモータ近傍でのPolII停止の存在が認識された。(2)「PolII停止は後生動物全体に及んでいる」PolII停止の事実は,ゲノムワイドにPolII染色体免疫沈澱(ChIP)-マイクロアレイ法(ChIP-chip)またはChip-高速シケーンシング法(ChIP-seq)を駆使することで後生動物全般に存在することが示された。停止PolIIの度合いは,プロモータ近傍に局在するPolIIとそれ以外の遺伝子領域に存在するPolIIの比率で表し,停止インデックスと呼ぶ。精密な実験条件下でのグローバルRun-onシーケンシングによれば,停止インデックスのパターンは約30%で一定している。(3)「PolII停止と解除の機構」まず,DNA上でクロマチン再構成によりプロモータ部分が開き,PolIIが呼び込まれてGTFタンパク質と共に前初期複合体を形成する。NELFおよびDSIF両タンパク質がPolIIに結合することでPolII停止が起こる。その後,p-TEFbおよびTF2両タンパク質の働きにより,DSIFとPolIIがリン酸化されてNELFが外れ,停止が解除されて転写が再開する。(4)「停止PolIIの機能」四つの機能が考えられる。第一は,転写因子の結合を助ける。第二に,p-TEFbを伴う転写活性化因子を呼び込むことで,同期した迅速な転写活性化を可能にする。第三に,多様な制御シグナルを集約する。第四に,RNAの伸長とプロセシングの連携のためのチェックポイントとなる。(5)「結論と見通し」転写制御におけるPolII停止の意義についての理解はまだ不完全であり,現在の解析手段をより活用し,真核生物のどの範囲まで,どのようなパターンでPolII停止が利用されているかの解明,さらにPolII停止機構の機序,生理機能についてのより詳細な解析が必要である。