抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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天然記念物である「奈良のシカ」は,野に生息しているが長年餌付けされ人馴れしている,半野生動物の典型例の1つである。本稿では,「奈良のシカ」が地域を定めず天然記念物指定された理由とシカ害訴訟和解でできたシカの二重規定を問題化させない保護管理の仕組みと二重規定の再問題化の原因について検討した。奈良公園を中心に生息するシカは,春日大社の神鹿として保護されてきたが,第2次世界大戦の混乱期に激減し,1957年に文化財保護法により「奈良のシカ」の名称で,特定の地域を出たシカの保護と生息地に学術上価値がなく申請書類に地権者の同意書の添付がなかったため地域を定めず国の天然記念物に指定された。奈良県鳥獣課は,捕獲をめぐる混乱を避けるため,「奈良のシカ」を「奈良市内のシカ」と規定し,二重規定が発生した。その後,鹿害訴訟和解により,シカの生息域を4つに区分し,農地のある2区分では捕獲が可能になり,愛護会が保護管理を行うという規定ができた。2000年に奈良県および京都府でそれぞれ鳥獣保護法に基づく特定鳥獣保護管理計画が策定された。捕獲可能な地区で十分な捕獲ができていないことおよび麻酔銃の使用許可による角伐りされるシカの増加により最近,京都府南部で「奈良のシカ」が確認されるようになった。これは,2つの規定の齟齬が旧奈良市以外で顕在化していることを意味する。京都府南部でのシカの捕獲者が文化財保護違反に問われないために,旧奈良市外のシカは鳥獣保護法だけで捕獲できることを関係主体間で確認し,公表するという解決案を提案した。