抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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本研究は,明治後期から昭和初期における職工社宅改善の試みに関し,宇野利右衛門の著述に基づく労働者居住施設の歴史的考察について報告した。先ず,明治後期から昭和初期にかけて,日本の労働問題に携わっていた宇野利右衛門(1875-1934)の活動に注目し,職工社宅改善の試みについて歴史的考察を行ったことを報告した。次に,労働者の居住施設における社宅のとらえ方に関し,社宅制度の推奨,「通勤職工」と社宅制度の関係を報告した。更に,職工社宅の様態についての言及に関し,模範的事例の紹介,社宅に関する調査とそれに基づく考察,旧来の職工社宅の問題を報告した。加えて,「理想的職工社宅」懸賞設計に関し,懸賞設計の開催,懸賞設計の入選案と選外佳作案を報告した。それから,「理想的職工社宅」懸賞設計の入選案の実現に関し,懸賞設計入選案の受容,大阪市営住宅,日本毛織印南工場職工社宅を報告した。最後に,宇野らは,企業における職工待遇の改善と日本の工業発展という観点から,労働者の居住施設の改善に取り組んだが,物理的な施設のみの問題として論じるのではなく,職工の生活の問題としてとらえたこと,そして,社宅に住まう職工をも含んだ広い意味での「通勤職工」の増加を目論んだこと,「寄宿職工」については,いかにして問題のある寄宿舎生活を改善し得るかを現実に沿って考え,その時々の状況に応じて参照すべきと考える具体的な施設を提示,評価し,施設のあり方を示したこと,「通勤職工」については,より長期的な視点に立ち,制度としての考え方と拡張策,社宅制度にもとづく集落のあり方,それがもたらす実際の職工生活,企業としての整備の基準といった問題に対する指針を示したこと,「理想的な社宅」を成立させるための普遍的な社会的システムを構想していたことを報告した。