抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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21世紀に入った日本農業は農業構造の歴史的な変動局面を迎えつつある。本稿の課題は,2010年農林業センサスを踏まえてこのような構造変動を少し長い歴史的スパンの中で位置づけ,その日本的あるいは現段階的特徴について考察することにある。明治期以来長らく固定的であった農家戸数が高度成長期に入った1960年代以降減少に転じ,20世紀末以降それが加速した。しかしこれまでそれが必ずしも構造変動には有効につながってこなかったが,21世紀に入って動きにくかった農地が「動く」状況が広がり,農業構造が大きく動き出した。農家戸数の歴史的な激減の中で,零細経営から農地を集積して従来の経営とは隔絶した規模の大規模経営(販売農家,組織経営体)が生まれ,経営耕地面積のシェアを急速に増加させつつある。それは,長らく日本農業を特色づけてきた零細農耕を基軸とした農業構造が変化しつつあることを示すものであり,その意味で歴史的変化ということができよう。と同時に,それが集落営農系譜の組織経営体が大規模経営の重要な一角を構成する形で進んでいるところにも,現在進みつつある農業構造変動の特徴があらわれている。現在形成されつつある大規模経営の主体をなすのは,専ら借地の集積によって規模拡大を図ってきた借地型大規模経営である(とくに都府県)。構図的にいえば,戦前期の大地主対零細小作から零細地主対大規模借地経営への変化である。水利の共同に基礎をおく日本の水田農業では,借地型大規模経営は水利等の地域資源管理の面等で地域,集落と関わりをもちながら経営を展開していかざるをえず,貸し手との関係も必ずしも単なる小作料の収受関係に純化しているわけではない。そこにも現在進んでいる農業構造変動の特殊日本的ないし特殊アジア水田農業的特徴をみることができる。(著者抄録)