抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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太陽光を吸収して触媒を相手に電子の受け渡しを行う”増感剤”の開発研究は人工光合成の実現に貢献する重要な研究課題である。新しい増感剤の候補としてイリジウム(III)錯体に着目し,その特色と最近の研究及び展望について述べた。Ir錯体を増感剤として用いるメリットはまず,最低励起状態が三重項であるため数百ナノ秒から数マイクロ秒オーダーの長い励起状態寿命を持つという特徴が挙げられ,触媒と相互作用する効率が高まるため有効である。次に配位子の適切な組み合わせと置換基導入が可能であるため,反応系に合わせた物性の制御をし易い点である。又,金属錯体に基づく増感剤として古くから用いられているルテニウム錯体と比べて一般的に光安定性に優れている。以上の利点に対し,可視光を利用して機能するIr錯体がほとんどないという問題点もあった。そこで可視光領域に大きな吸収帯を持つ[Ir(C6)
2(bpy)]PF
6と標記される新しいIr錯体を開発した。クマリン6と呼ばれる有機色素と2,2′-ビピリジルを配位子として組み合わせた錯体でモル吸光係数は483nmにおいて129000に達した。これはこれまで報告されているIr錯体のモル吸光係数の中で最も大きな値である。実際に増感剤として機能するかを確かめるため[Ir(C6)
2(bpy)]PF
6を光水素発生反応に応用した。増感剤1分子当たりの水素イオンの水素への変換のターンオーバー数(TON)は678に達し,増感剤としての働きが示された。