抄録/ポイント：
抄録/ポイント
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海水損後,約50日を経て岩手県陸前高田市立博物館から救出された500点以上の大工道具には,同年8月から11月にかけて固着した土砂のドライクリーニングが施された。その後1年強が経過した2012年10月29日より,本誌第29号で述べた被災古文書の安定化処理法を基に,残存状況が良好な民俗資料を対象とする安定化処理法を構築し,除菌・除泥・脱塩を行った。白色および黒色を呈するカビが発生した資料を400ppm次亜塩素酸ナトリウム水溶液で30分間浸漬処理し,菌を殺滅した。15分間超音波洗浄処理を施した資料の木部表面には,双眼実体顕微鏡下でも土砂の固着はみられなかった。資料を4lの水道水に浸漬し,24時間毎に水を交換する作業を,脱塩液の電気伝導率および塩化物イオン濃度が水道水と同程度になるまで繰り返した。その結果,体積500cm
3程度の鉋については概ね3週間で脱塩を完了できた。この方法により,残存状況が良好で,海水損後1年以上を経過した大工道具に対し,効率的に安定化処理を施し得ることが確認できた。(著者抄録)
