抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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非海塩起源の硫酸イオンに対する硝酸イオンの濃度比(NO
3-/nssSO
42-濃度比)は,降水の酸性化に及ぼす硫酸と硝酸の寄与を評価するうえで便利な指標である。本報では1976年から2011年の期間にわが国で実施された湿性沈着の観測データを収集し,(1)綾里,狛江,五島におけるNO
3-/nssSO
42-濃度比の経年変化と季節変化;(2)近年のNO
3-/nssSO
42-濃度比の地理分布と時間変動の変化;(3)日本列島のNO
3-/nssSO
42-濃度比に及ぼす東アジア地域のNO
x/SO
2排出量比の変化の影響について検討を行った。日本列島におけるNO
3-/nssSO
42-濃度比の経年変化をみると,濃度比が大きく増加したのは,いずれの地点でも1980年代から1990年代であり,2000年代になると変化は明瞭でなくなった。狛江と綾里における濃度比の変化には,2000年夏季に始まった三宅島の噴火の影響が認められる。1980年代から1990年代に綾里と五島でみられた濃度比の増加率は,この間の東アジア地域におけるNO
x/SO
2排出量比の増加率に近い。これに対して狛江における濃度比の増加率は,綾里や五島よりもかなり大きく,首都圏の大気中で生成された硝酸の影響を受けたことが示唆される。日本列島におけるNO
3-/nssSO
42-濃度比の地理分布をみると,濃度比は太平洋側と日本海側を含めた本州の中央域で全般に大きく,北東域と南西域では小さい。2000年代のなかごろまで横ばいで推移してきたNO
3-/nssSO
42-濃度比は,2000年代のおわりには増加に転じた形跡がある。その傾向は日本列島の広い地域で認められるが,とりわけ西日本地域の日本海側で顕著である。もしこうした濃度比の変化が,当該地域における排出量の変化と関係したものなら,その理由としてはNO
x排出量の増加,あるいはSO
2排出量の減少,さらにはその両方が関係しているのではないかと考えられる。既往のnssSO
42-沈着量とNO
3-沈着量に対する排出源寄与率の解析結果をふまえると,中国大陸における排出源の変化,とくにSO
2排出量の頭打ちが濃度比の増加に関係している可能性は大きい。(著者抄録)