抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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垂直連関市場をともなう小国開放経済を想定し,自由参入均衡における上流部門の企業数について社会厚生の観点から分析を行った。本論文が想定する経済には工業部門と農業部門という二つの生産部門が存在し,工業部門では上流部門と下流部門によって垂直連関市場が形成される。さらに,上流部門は水平的な複数の部門から構成され,各部門では寡占企業によってクールノー競争が行われる。中間財は非貿易財であり,それゆえ,工業部門では産業レベルの規模の経済が働く。このため,所与の国際価格のもとで経済は工業部門と農業部門のどちらかの生産に完全特化する。ここでは,経済は工業生産に完全特化するとして分析を行った。まず,工業部門,農業部門および労働市場のモデルを示し,次に,小国の仮定と賃金格差に基づく部門間労働移動のもとで,どのような自由参入均衡が実現されるかを分析した。そして,工業部門でのみ生産が行われる場合に,どのような条件のもとで自由参入均衡における企業数が社会的に過剰または過少になるかを検討した。その結果,本モデルは,消費財市場のみを想定する伝統的な寡占モデルと同様に企業の新規参入が顧客奪取効果を持つならば,自由参入均衡において過剰参入が生じることが示されたが,一方,企業の新規参入が顧客創出効果をもつならば,自由参入均衡における上流部門の企業数が,社会的に最適な水準よりも小さくなる可能性があることが示された。