抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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ヒ素による農耕地の汚染は,世界各地で大きな問題となっている他,近年では化学合成された有機ヒ素化合物の投棄によるヒ素汚染も頻発している。特に2003年3月に茨城県神栖町(現神栖市)で発生したジフェニルアルシン酸(DPAA)の不法投棄による住民のヒ素中毒事件と,近隣水田で生産された米のヒ素汚染は記憶に新しい。こうしたヒ素被害の根本的な解決には汚染土壌からのヒ素の除去が必要だが,農耕地に適用可能な技術は未だ確立されていない。特に有機ヒ素化合物については研究例がほとんどなく,その環境動態さえも不明な点が多い。そこで本研究では,代表的な有機ヒ素化合物であるDPAAについて,その還元土壌中での動態について検討を加えた。その結果,DPAAの還元的変換は硫酸根と,稲わら,セルロース,酢酸等の炭素源がともに存在する条件において促進されることが分かり,DPAAの還元的変換への硫酸還元菌の関与が考えられた。硫酸還元菌の特異的阻害剤であるモリブデン酸の添加がDPAAの還元的変換を抑制することも確認された。DPAAの代謝物としてはフェニルアルソン酸,ジフェニルメチルアルシンオキシド,無機ヒ素等の他,硫酸還元条件において特異的に見出される未知ヒ素化合物が検出された。こうした知見はこれまでに報告はなく,今後DPAA等の有機ヒ素化合物で汚染した土壌の修復法の開発に利用できる可能性がある。(著者抄録)