抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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セルロースは,樹木等の支持成分として細胞壁に蓄積しており,繊維状のナノ構造体を形成している。このナノ構造体は,“セルロースミクロフィブリル”(CMF)として学術上定義されており,高アスペクト比・高強度・高弾性率・低熱膨張率・大比表面積等の特長を有している。しかし,生体内のCMFは強固な集合体を形成しているため,分散が極めて難しく,CMFを用いた材料設計には大きな制約があった。そのため,CMFの分散性を高める検討が精力的に進められてきた。CMFの分散体は,材料科学分野において近年世界的な注目を集めており,“セルロースナノファイバー”または“ナノセルロース”とも呼ばれている。当研究室では,TEMPO触媒酸化と呼ばれるグリーンケミストリーと軽微な機械的処理を併用することにより,幅約3ナノメートルのCMFを水中で単離分散させることに世界で初めて成功している。その結果,未解明であったCMFの基礎物性も評価可能となり,例えば,単繊維強度が鋼鉄の5倍以上の強度であることも本プロセスを経ることで明らかとなった。また,分散したCMFの集積構造を制御することにより,様々な形態の材料を構築することもできる。例えば,水中分散したセルロースミクロフィブリルは,自己組織化することで液晶性を示す。この液晶性ミクロフィブリル分散液に希酸を滴下すると,ミクロフィブリルの自己組織化配列を固定化することができる。このプロセスを経ることで,木材漂白パルプを出発として,濃度0.1%(水分99.9%)でも自立する超高弾性なヒドロゲルや,透明で強靭なナノ多孔体等を調製することができる。特にナノ多孔体は,空気よりも低い熱伝導率を示すため,透明で強靭な超断熱材という新規材料への展開も期待される。(著者抄録)