抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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時間の単位である「秒」の定義は現在セシウム原子のマイクロ波遷移に基づく原子時計で実現されている。セシウム原子時計は,これまで約10年に1桁の割合で精度向上を実現し,発明から50年以上経過した現在では16桁の精度を達成している,しかし,セシウム原子時計の精度向上はいよいよ限界に達している。その主な原因は,時計の周波数変動を引き起こす各種不確かさ要因の限界が16桁目にあることである。また周波数安定度も良くないため,測定には長い時間をかけて積算する必要がある。その結果,セシウム原子時計の精度評価に莫大な時間がかかり,研究の妨げになっている。ところで,原子の光の遷移周波数がマイクロ波と比べて5桁高いので,光遷移に基づく原子時計(光時計)を用いることで時計の相対精度が5桁上がる可能性がある。また,同時に周波数安定度も大幅に改善されるので,測定にかかる時間も大幅に短縮される。その結果,研究の進展がかなり速くなっている。さらに,周波数安定度の大幅な向上は光時計を重力ポテンシャルの高精度センサーとして応用する道を開いた。一般相対性理論では,重力は空間を歪ませ,時間の進みを遅らせる。地球上では,重力場が存在し,重力のない宇宙空間に比べて時間がゆっくり進むことになる。原子時計は重力ポテンシャル変化を測定できる唯一のセンサーである。ただ従来のセシウム原子時計だと,高い測定精度を出すには長い積算時間を要するので,その間に起きる重力ポテンシャルの変動は測定できない。光時計は地殻変動などで引き起こされる微小な重力ポテンシャル変動をリアルタイムでモニタリングできる可能性がある。光時計に関する研究の飛躍的な発展は,光時計の測定不確かさがセシウム原子時計で制限される事態を招いた。つまり,光時計同士の直接比較によって光時計がより良い再現性を持っていることを示せても,秒の定義であるセシウム原子時計の正確さ以上に周波数を測る(セシウム原子時計の正確さ以上の桁数で光時計の周波数を表現する)ことは原理的にできない。国際度量衡委員会は,このような状況を分析し「秒の二次表現」という秒の再定義の候補リストを構築することを決めた。いずれセシウム原子時計に代わってより精度の高い光時計を秒の新しい定義にする予定である。...(著者抄録)