抄録/ポイント:
抄録/ポイント
文献の概要を数百字程度の日本語でまとめたものです。
部分表示の続きは、JDreamⅢ(有料)でご覧頂けます。
J-GLOBALでは書誌(タイトル、著者名等)登載から半年以上経過後に表示されますが、医療系文献の場合はMyJ-GLOBALでのログインが必要です。
日本国内での産消提携の停滞と対照的に,CSAの展開が注目され,欧米を中心に世界各地で相当な広がりを見せている。産消提携とCSAは生産者と消費者が直接に結びついていること,消費者が品目を指定せずに旬の農産物が詰め合わされたバスケットをそのまま購入するという方法が共通している。一方で,産消提携が有機農産物の市場流通が未整備の段階で成立したことに対し,CSAは量販店においても有機農産物が購入可能な市場環境を背景にしながら産消の直接結合を求めたものであるという違いがある。日本の有機農業運動は,健全な農業と農産物を希求する社会運動として30年以上にわたって活動を継続してきた。それは,産消提携という形態によって生産者と消費者の対等な関係構築を目指すものであったが,両者の空間的な近接を是としながらも,まずは遠方であっても需要と供給を結びつけることが第一とされた。一方で,一般市場での有機農産物需要は,何度かの有機農産物ブームを経て高価格商品として定着し,流通形態の多様化によって,市場に流通しない商品を求める方法としての産直の有用性は低下している。その結果,安全が担保された食品が求められながらも,有機農産物市場は低位均衡とも言える状態にある。産消提携は,生産者と消費者がそれぞれの立場から質的に豊かな社会をめざす運動体としての性格を有しながらも,安全安心食品の流通媒体として他の事業者との競合関係に陥ることとなり,現在では,参加者数の激減,参加団体の解散などの局面に直面している。しかし,かつての団体間提携から個人の生産者と消費者による多様な方法での提携が成立し,CSAと同様の形態をとる取り組みも現れており,有機農業の支援形態として現状に適応し存続していくことも期待できる。本論文では,米国CSAの原型とされるスイスのACPと日本の産消提携の展開をたどり,両者の理念と実践におけるその変容を比較することで,今後の産消提携を展望した。(著者抄録)