抄録/ポイント:
抄録/ポイント
文献の概要を数百字程度の日本語でまとめたものです。
部分表示の続きは、JDreamⅢ(有料)でご覧頂けます。
J-GLOBALでは書誌(タイトル、著者名等)登載から半年以上経過後に表示されますが、医療系文献の場合はMyJ-GLOBALでのログインが必要です。
近年の微粒子合成手法の発展により,様々な「パッチ粒子」-粒子表面に物性の異なる領域(パッチ)を持つ異方的なコロイド粒子-が実現できるようになり,従来の等方的な粒子とは異なるエキゾチックな振る舞いが注目されている。近距離の粒子間相互作用は一般に表面物性に依存するため,パッチ粒子は方向に依存した異方的な相互作用を持つ。また直径が10nm-μm程度(メンスケール)の微粒子であるため,原子・分子よりは遥かに大きいが,十分に熱運動できる程度には小さい。そのためパッチ粒子はパッチの数や配置などの異方性により,多様な秩序構造を自己組織的に形成すると予想されている。例えば望ましいフォトニックバンド,機械強度,触媒特性などに必要な微細構造(メソ構造)を,パッチ構造を通じ実現できる可能性がある。また歴史的にコロイド分散系は,粒子多体系の相挙動を解明するためのモデル系としても研究されてきた。等方的な粒子の場合,例えば気-液相分離や結晶化など,かなりの部分が実験・理論の両面から解明されている。しかし異方的コロイド粒子系の研究は未だ端緒についたばかりである:コロイド分散系と言っても食品やインクなど実に多様であり,当然異方的な粒子も多い。特にタンパク質などの生体高分子は異方的コロイド粒子としての側面を持つため,その相挙動の理解は生物科学においても重要である,パッチ粒子系はこのような研究における単純なモデル系としても注目されている。これまでのところ,パッチ粒子分散系特有の相挙動や新規な相に関しては,主に理論・シミュレーションにより研究が進められてきた。一方,実験でもコロイド粒子によるカゴメ格子結晶が初めて実現されるなど,興味深い構造形成が報告されている。しかし実験では異方的な相互作用の制御が困難であるため,理論と比べると研究例はかなり限られており,特に相挙動の系統的な研究には至っていない。これに対して我々は分散媒の臨界現象により誘起される粒子間相互作用を利用することで,パッチ間の引力を温度により連続的かつ可逆的に制御することに成功した。そこで最も単純なパッチ粒子であるヤヌス粒子(半球パッチを持つ粒子)の2次元分散系に対しこの手法を用い,分散状態の引力依存性を調べた。その結果,平衡状態で有限サイズのクラスターを形成する「安定クラスター相」を見出した。...(著者抄録)