抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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本稿では,ナノコンポジット絶縁材料の誕生から現在までにおける研究開発の歴史的展開について紹介する。ナノコンポジット絶縁材料は,ポリマーにナノサイズの無機フィラーを少量添加した材料で,元の材料に比べ,絶縁性能などを飛躍的に向上できることが魅力である。ナノコンポジット材料は,豊田中央研究所の研究者達によって1987年にクレイ/ポリアミドナノコンポジット材料が初めて開発された。この開発を契機に,ナノフィラー分散によるポリマーの高性能化,高機能化の検討が進んだ。そして,ナノコンポジット絶縁材料の誘電・絶縁現象では,ナノフィラーとポリマーの界面が重要な役割を果たしていることが明らかにされ,誘電-絶縁現象を説明するための界面モデルが提案された。マイクロコンポジットにナノフィラーを分散することで絶縁破壊特性の向上と低熱膨張率を両立したナノマイクロコンポジットが2005年に報告され,ナノマイクロコンポジット絶縁材料が誕生した。ナノコンポジット絶縁材料では,ナノフィラーの分散状態が誘電・絶縁特性に大きな影響を与えるため,その作製方法は重要である。作製方法は,クレイを用いたインターカレーション法,金属アルコキシドの加水分解一重縮合反応を利用するゾル-ゲル法,ナノフィラーを直接ポリマーに混合する直接分散法に大別される。また,ポリマー中におけるナノフィラーの状態を評価する方法として電子顕微鏡(SEMおよびTEM)がある。これは,ナノフィラーの分散状態を直接観察することができるため最も有効な評価方法である。材料設計においては,計算機シミュレーションが取り入れられ,ナノフィラー/ポリマー界面の構造解析やナノフィラーの分散挙動解析などが実施されている。さらに分子の塊を一つの粒子と取り扱う粗視化分子動力学法を用いて,ナノフィラーを分散したエポキシ樹脂の強度計算(靭性など)も可能になっている。現在では,ナノコンポジット絶縁材料の優れた特性を活かし,実用化に向けた取り組みが行われており,ナノコンポジット絶縁材料を用いた直流高電圧押出ケーブルやマグネットワイヤが実用化されている。近い将来,ナノコンポジット絶縁材料は,優れた絶縁性能だけでなく,低熱膨張率,高熱伝導,高耐熱,高強度,高・低誘電率などの特性を合わせ多機能性絶縁材料に発展すると確信している。