抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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日本の照葉樹自然林の残存面積は,潜在的な分布域が国土面積の約半分であるのに対して約1.6%しかなく,消失の危機に瀕している。本稿では,照葉樹林を地域とともに守っていくために宮崎県綾町で実施された取り組みを紹介する。2005年から宮崎県綾町周辺の約1万haの森林において九州森林管理局,宮崎県,綾町,公益財団法人日本自然保護協会(NACS-J),てるはの森の会(市民団体)が協定を締結し,官民協働で人工林を間伐し,自然林を復元する取り組みがはじまった。多様な主体が関わる意志決定の場が設定されたこと,人と自然が共生した持続可能な地域づくりを目的の一つとしたことなど,多くの成果を挙げてきた。町民の関心を高めるために日本自然保護協会が中心となり,地域住民が自然とのかかわりを考えるための「ふれあい調査」を実施した。また,「国際照葉樹林サミット」を開催し,照葉樹林に関係する内外の専門家や保全活動を行っている団体に呼びかけ,保全活動を進めていくことを再確認した。さらに新たにユネスコエコパーク(生物圏保存地域)への登録を通して,綾町の里山エリアを含めた地域を保護地域とし,町民自身が主体的に地域の照葉樹林の保全を含めた地域づくりに参加する仕組みを作る活動を進めた。2011年9月に綾の照葉樹林がユネスコエコパークに推薦され,2012年7月に正式に登録された。綾町における取り組みは,照葉樹林のような保護上重要な生態系を,地域とともに保全するための具体のプロセスを提示した価値ある事例と考えられる。特に,保護地域のゾーニングを中心とする施策の枠組みを利用し,地域を巻き込む保全体制づくりを進められた点が,この取り組みの特色である。(著者抄録)