抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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製造業における製造現場での改善効果について,いかなる測定尺度を用いるべきかは従来から議論されている。田中(2004)はその重要性を主張し,Jコストを製品のリードタイム中に投資されている原価のリードタイムでの時間積分と定義し,「時間を考えに入れたコスト」としてJコストと呼んでいる。数学的な定義式は,Jコスト=∫C(t)dtである。ここで,Cは原価であり,リードタイム中の時刻tの関数である。Jコストを鍵概念とする原価改善に役立つ管理会計情報論をJコスト論と呼んでいる。本稿では,このJコスト論での投入資金粗利率の単位について,量的次元を分析することで,Jコスト論で前提としている時間に対する意識を明らかにする。量的次元分析は籏本(2012:2013)で原価計算に応用したが,そのうち籏本(2012)で分析した当期製造費用に関する2つの文脈がJコスト論を理解する上で有効である。Jコスト論では,資金を投入した複数の単位時間を問題にしており,積み重ねた時間への意識が強く,複数期間志向である。原価計算ないし管理会計は,原価計算期間のような1単位の時間を意識しており区分した時間への意識が強く,単一期間志向である。この単一期間志向は,企業会計が公準としている会計期間に適うものであり,原価計算ないし管理会計が企業会計の一部であることを物語っている。この点において,複数期間志向であるJコスト論は会計そのものではないと考えるべきである。だからといってJコスト論が原価計算ないし管理会計とは無縁と考えるべきではない。むしろ,Jコスト論を「会計リンクアプローチにおける情報」(廣本2008)と解することによって,単一期間志向の経営情報システムである管理会計を,複数期間志向で補完することにJコスト論の意義があるからである。