抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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本稿ではエネルギー政策立案のために重要な事項である発電コストの評価について,特に原子力に焦点を当て,既往のコスト評価事例をもとに主要な論点を整理した上で,それらに係る評価を行った。発電コストに関する多くの主要な論点は2011年に政府により組織された「コスト等検証委員会」において包括的に議論されており,そこでは幾つかの例外を除き多くの点が概ね適切に議論されたものと考えられる。評価方法上最も大きな課題として残されたものは,別稿にて詳細に論じる原子力事故に伴うリスク対応のコストである。これについては事故被害額や事故の発生頻度についてより信頼性の高い評価を可能とすべく,検討やモデルの整備が進められる必要がある。原子力発電の経済性に大きな影響を与えると一般に考えられている諸点のうち原子炉の廃止措置,高レベル放射性廃棄物処分や再処理等にかかる費用は,原子力発電コスト全体の中では大きなシェアを占めるものではない。原子力発電の経済性に最も大きな影響を与えるものは,福島事故前から広く認識されていた通り,資金調達環境(発電コスト試算上,割引率に相当するもの)である。日本においてはこれまで事業者が比較的良好な環境において資金を調達することが可能であったため,実際に原子力発電は他電源と比較して安価であった。しかし例えば1990年代から電力市場の自由化が進んだ英国では,電気事業者の資金調達コストが増大することで原子力発電の経済優位性が大きく変化するものと評価され,実際にそれが原子力発電所新設の停滞の無視しえない一因となった。もし今後,日本においてもより競争的な市場の導入により電力会社の格付けに影響が及ぶことがあれば,従来のような低い金利での資金調達が困難となり,ひいては原子力発電の経済性が大きく変化する可能性がある。但し一口に自由化といっても日本と欧米とでは電気事業の置かれた状況自体が大きく異なり,今後日本において事態がどのように進展するかは現状では不明である。原子力発電の経済性はエネルギーミックスのあり方に大きな影響を与えるものであるため,今後のエネルギー政策を論じるに当ってはこの点に特に注意すべきであると言える。(著者抄録)