抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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オトシブミ類では母虫が寄主の葉を巻き植物本体から栄養供給を遮断して揺籃を作る。幼虫はその内部で揺籃を餌として育つ。そのため,揺籃がもつ餌資源量が幼虫発育の制約となっている可能性がある。オトシブミ類6種,ナミオトシブミ,ヒメコブオトシブミ,ヒメクロオトシブミ,エゴツルクビオトシブミ,ルイスアシナガオトシブミ,ナラルリオトシブミを用い揺籃を食料面から1)餌質,餌量から検証,2)餌利用の安定同位体比分析による解明,を行った。1)ヒメクロオトシブミとエゴツルクビオトシブミの幼虫期の揺籃摂食率は29.8%,45.9%で,揺籃は餌として十分な量用意されていた。また餌の消化吸収率(1-糞量/摂食量)は72.3%,77.1%で非常に高かった。成長効率(乾燥重量/摂食量)は19.1%,11.6%で植食性昆虫の成長効率と比較し同程度かやや優れていた。2)6種のオトシブミ類の餌の揺籃と,それで育った成虫,糞の安定同位体比は炭素でそれぞれ-29.87,-27.29,-30.62‰,窒素で-1.33,-0.04,-0.76‰であった。揺籃の炭素同位体比は未摂食の葉の同位体比よりもかなり低かった。オトシブミ類の濃縮係数は,炭素では通常の係数より高い1.62~3.31‰で
12Cの積極的な排出が行われていた。窒素では通常値より低い0.61~2.66‰であったが,残された糞量が少ないことから,幼虫による食糞による窒素栄養の吸収が推定された。ナラルリオトシブミでは窒素の濃縮係数が他のオトシブミ類より高く,通常値に近かった。これは葉と揺籃の安定同位体比から,揺籃からの窒素栄養の消失が糸状菌の腐敗防止作用により防がれているためと推定された。揺籃は,餌としての機能を十分に発揮していた。オトシブミ類の母虫は揺籃形成において,子の餌,環境に関して,質,量ともに良い状態になるように工夫をこらしていると考えられた。(著者抄録)