抄録/ポイント:
抄録/ポイント
文献の概要を数百字程度の日本語でまとめたものです。
部分表示の続きは、JDreamⅢ(有料)でご覧頂けます。
J-GLOBALでは書誌(タイトル、著者名等)登載から半年以上経過後に表示されますが、医療系文献の場合はMyJ-GLOBALでのログインが必要です。
施肥や農薬散布に伴う水質汚染,遺伝子組換え作物による食の安全性への危惧などに対して,欧州では有機農業に対する関心が高まっている。デンマークではいち早く政策支援を行い,有機農業の普及を生産レベル,市場レベルで促進してきた。その一方で,酪農または耕種に特化した大規模な有機農業経営体が増加し,酪農家は家畜排せつ物の過剰排出,耕種農家は作物養分の不足という新たな課題に直面している。そこで本稿では,解決策の一つである有機農家間の家畜排せつ物の取引に着目し,どれほどの有機農家同士がパートナーシップを形成しているのか,慣行農家からの家畜排せつ物搬入はどの程度行われているのか,具体的な取引がどのように行われているのかを明らかにした。まずデンマーク国内の畜産集積地域と非集積地域を調査地域として選定し,施肥管理データベースを用いて地域ごとのパートナーシップ参加状況を調査した。集積地域では8割以上,非集積地域では5割の有機農家が取引に参加していた。また,集積地域では有機酪農家が有機耕種農家に牛の排せつ物を搬出する一方で,慣行養豚農家からの搬入も多数行っていた。さらに有機酪農家へのアンケート調査より,有機農家間の取引では,受け取り側(有機耕種)が取引費用を負担し,長期継続的であることが明らかになった。今後の有機栽培農地拡大政策や慣行堆肥の使用規制の実施に向けて,有機農家同士の社会関係性を考慮したパートナーシップ促進や地域差を踏まえた規制実施などの必要性が示唆された。(著者抄録)