抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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本研究は,台灣客家を対象に歴史的試練を経て形成された集落の立地と居住環境の分析を通して,台灣客家集落の諸特性と居住環境を明らかにすることを目的としている。移住を繰り返し,常に安定した居住地を求めてきた客家の歴史から見ると,住まいを形成し生活を営む基盤となる集落とその立地空間についての研究は,少数族群の生き続ける居住文化を理解する上で重要な課題であると考える。台灣に分布する客家集落のかたち,立地,周辺に居住する族群の位置関係を4つの型に示し,それぞれの型に対応する典型事例集落-1.大茅埔集落 2.新屋集落 3.北埔集落 4.内灣集落を選定した。そして,文献調査(歴史資料,台灣堡圖,新旧地籍図)と現地調査から各集落の環境を把握し,集落空間の組み立てに影響を与える面:居住域,聖域,生産域,線:境界域,水系,道,点:方位軸,井戸の構成要素を抽出し,集落の空間を秩序づけている構成原理の分析を試みた。その結果,各集落における4つの類型別空間特性を見出し,台灣客家集落の居住環境と居住文化を明らかにした。独立した環境下において外敵からの侵略に備える「独立防御型」の大茅埔集落は,周辺を他族群に囲まれた平坦な地形にあり,刺竹林や堀・門などにより区画された居住域と聖域は生産域に囲まれて配分され,水系により連結されている。立地条件や周辺居住者に合わせて集落形態が変化する「分散適応型」の新屋集落は,周辺を客家や福ろう人集落に隣接する緩斜面地形にあり,林地と溜池により区画された居住域と聖域は小さな単位で生産域に囲まれて配分され,道路と水系によって連結されている。周辺の自然環境や同族の客家に防御される安定した立地に広がる「分散安定型」の北埔集落は,周辺を客家集落に囲まれた緩傾斜地形にあり,刺竹林や門,樹林地などにより区画された居住域と聖域はその周縁を取り囲む生産域によって配分され,聖域を起点とする道路と山からの水系により連結される。広域に分布しながらも核となる拠点を持つ「分散連携型」の内灣集落は,周辺を客家と原住民集落に隣接する傾斜地形にあり,斜面地や樹林地によって区画化された聖域を包含する居住域は生産域に囲まれて配分され,山からの水系と谷間を流れる川によって連結されている。(著者抄録)