抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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本論文は,東京都城東3区における戦災樹木の残存状況と損傷状態について報告した。先ず,戦後70年が経とうとする現在,日常空間において戦争の記憶を今に伝えるものはほとんどなくなっていること,本研究においては,東京大空襲の攻撃目標となった現在の台東区,墨田区,江東区の3区を対象エリアとして,戦災の痕跡を残す戦災樹木の残存状況と損傷状態,将来に向けての保全対策を明らかにすることを目的としたこと等を報告した。次に,調査内容に関し,調査地域および調査対象とする戦災樹木,調査方法および調査項目を報告した。更に,調査結果に関し,戦災樹木の残存状況,損傷状態,保全対策を報告した。加えて,まとめとして,本研究では戦災樹木の実態を正確に把握することを目的としたこと,残存状況に関しては,今回対象とした多くの戦災樹木が戦災焼失地域の縁辺部に位置しており,戦災樹木の分布と戦災焼失地域との関係が明らかになったこと,損傷状態に関しては,焼焦げ,空洞,傾きが特に戦災樹木の際立った特徴と考えられたが,焼焦げは樹勢にはあまり影響しないこと,空洞は樹勢への影響が推察されること,保全対策に関しては,各区の保護樹木指定の基準が樹木の大きさのみを対象としている点が最大の問題点であること,保護指定を受けているものはごく一部であること,今後は「歴史的価値」という新たな基準を設定して,優先的に保存されるような体制を取るべきであること等を報告した。最後に,今後の課題として,最終的には空襲を受けた全国の都市の戦災樹木まで調査を広げたいこと等を報告した。