抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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量子力学には「不確定性関係」(「不確定性原理」ともいう)として知られている関係式があり,例えば位置と運動量といった非可換な物理量を同時に決定することはできないとされている。しかしこの「不確定性関係」に実は二つの異なった種類が存在することは,あまり認識されていない場合が多い。その一つは,量子状態に付随する「物理量のゆらぎ」の間の関係であり,もう一つは物理量の測定における「正確さ」あるいは「測定誤差」とその測定が別の物理量に与える「擾乱」との間の関係である。以前は,量子力学における測定過程の研究と言えば一種の禁断の領域であって,堅気の研究者が立ち入るところではないと言われていたこともあるやに聞くが,近年,量子測定過程についての理解は大きく進んだ。そして,測定における誤差と擾乱およびそれらの間の不確定性関係について,従来の理解を塗り替える理論的研究が進展するとともに,その実験的検証も可能となってきている。本稿では,量子測定における誤差・擾乱の不確定性関係についての最近の研究の進展について概説するとともに,筆者らによる,光子の偏光を用いた誤差,擾乱の計測と不確定性関係の検証実験について紹介する。まず,前述した二種類の不確定性関係の違いについて述べた後,測定誤差と擾乱の定義,およびそれらの間の不確定性関係に関して,「γ線顕微鏡の思考実験」を基に1927年にHeisenbergが提唱した関係式(Heisenbergの不等式),2003年に小澤が提唱した関係式(小澤の不等式),および2013年にBranciardが提唱した関係式(Branciardの不等式)について説明する。次に,量子測定における測定誤差と擾乱の実験的計測方法について概説した後,光子の偏光に関する測定誤差と擾乱の計測,およびそれらの間の不確定性関係の検証結果について報告する。筆者らが行った実験では,対象系の状態をほとんど乱すことなく物理量を計測する手法(弱測定法)を用いて,光子の縦横方向の偏光に関する測定誤差と,その測定によって生じる±45°方向の偏光に関する擾乱を精密に計測した。...(著者抄録)