抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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2008年12月,太陽活動が約200年ぶりとも言われた太陽活動の低下を見せた。通常11年の周期で増減する太陽活動のリズムが乱れ,太陽表面での磁場活動や太陽総放射量が観測史上最低のレベルに達した。2009年1月に開始した第24太陽活動周期は2013年に極大を迎えたが,太陽表面の磁場活動の指標となる太陽黒点の数は,2001年の極大期の半分程度に低下した。太陽活動は今後どうなるのだろうか。17世紀の半ばから70年間にわたって発生した太陽活動の異常低下(マウンダー極小期)は再来するのだろうか。人工衛星による太陽観測と,樹木や氷床コアなどを使った長期的な太陽活動変動の復元の両面から研究が進められている。また,もしマウンダー極小期が再来するとすれば地球環境にどのような影響が出るのかも,社会にとって重要な問題である。こちらについては,気象観測と古気候学的な手法による研究から検証が進められている。太陽活動が地球に影響する経路はいくつか考えられる。日射量変動の影響,太陽紫外線の成層圏への影響,太陽宇宙線の中間圏への影響,そして銀河宇宙線の影響である。銀河宇宙線が気候に影響するプロセスは未解明な点が多いが,大気成分のイオン化を通じて雲活動に作用していると考えられている。1997年に銀河宇宙線と低層雲の被覆率に相関が見られるという驚くべき発表がなされて以来,その相関の検証や,チャンバー実験による物理プロセスの研究が進められている。地球に飛来する銀河宇宙線のフラックスは,宇宙線をシールドする太陽圏磁場や地磁気の強度などによって決まる。太陽圏とは,太陽表面から吹き出すプラズマと磁場の風(太陽風)が到達する領域のことである。太陽風は,太陽から約80天文単位(AU)のところで星間物質との相互作用により亜音速に減速し,最終的には太陽から120AUあたりにまで達していると考えられている。また,太陽圏の周辺の宇宙環境が変わっても,地球に飛来する宇宙線量は変化する。銀河宇宙線量の変動は本当に気候変動に影響するのだろうか。それについて1つの手がかりを与えているのは上述のマウンダー極小期である。太陽黒点が70年間にわたって消失している間,太陽圏環境が変化し,宇宙線フラックスが特異なパターンで変動していたことが明らかになったのである。(著者抄録)