抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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本稿では,丸善株式会社等で取り組んでいる,大学図書館向けの和書電子書籍提供について紹介する。日本の大学・研究図書館において,電子書籍は電子ジャーナルやデータベースという形で急速に導入が進んでいるが,それらは主に洋書系のものであった。これに対し,日本の出版業界の事業規模は小さく,独自に電子書籍のプラットフォーム開発に投資して販売活動を行うのは現実的でなく,出版社に代わって電子書籍にアクセスしやすい環境を整える事業者が必要になる。この状況のもとで,丸善株式会社では,複数の学術・専門書出版社の電子書籍を単一プラットフォームで提供する,アグリゲーター型サービス「Maruzen eBook Library」(MeL)を2012年より開始し,さらに2014年からは,慶應義塾大学をはじめとする8大学等と協力して「大学図書館電子学術書共同利用実験」の中で開発された「BOOkLooper電子図書館」(BL電子図書館)を通じて電子書籍の提供を開始した。2014年末現在,150出版社の17,000点以上を提供しながらさらに拡大を進めており,学術・教育系の機関契約型和書電子書籍サービスとしては国内最大級のものとなっている。MeLを通じた販売が拡大する一方で,売れ筋となるのは刊行から期間を経ていない新刊書であることが明らかになりつつ,電子書籍の販売をもって冊子体の売上が抑止されることもないのが明らかになるにつれ,出版社側も新刊書の電子書籍提供に舵を切り始めている。こうした動きをさらに推し進めたのが「新刊ハイブリッドモデル」である。このモデルは,人文社会科学系の代表的な出版社である慶應義塾大学出版会,勁草書房,東京大学出版会,みすず書房,有斐関,吉川弘文館の6社と九善,KMSIが2014年9月に開始したもので,6社の最新刊が電子書籍としてMeLやBL電子図書館を通じて提供される一方,図書館が新刊電子書籍目録に掲載されているタイトルの冊子体も購入している場合には,電子書籍に特価が適用されるというものである。