抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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トカラ列島は動物相の旧北区と東洋区の分布境界線として有名な「渡瀬線」が存在するなど,生物地理学的に注目されてきた地域である。過去の研究例として,トカラ列島とその周辺の島々の陸産貝類の比較研究では,トカラ列島は動物相の移行帯であり,その境界は口之島-中之島,悪石島-宝島間にあり,口之島の動物相は他のトカラ列島の島々よりも種子島・屋久島に類似しているという結果が得られている。しかし,トカラ列島を主要な分布地域とするタネガシママイマイの種内変異を取り扱った研究では,トカラ列島の個体群は種子島・屋久島のものとは殻の形態が異なっており,トカラ列島の個体群は1つのまとまったグループを形成するという結果となり,陸産貝類の動物相を取り扱った研究とは口之島が属する生物地理学的グループが異なっていた。このように異なる結果が出ている点やこの地域の地史などから,各島にはまだ記録されていない陸産貝類が生息している可能性が高いと考えられた。そこで,本研究では,詳細な調査を行うことによって,改めてトカラ列島の陸産貝類相に関して生物地理学的な検討を行った。トカラ列島において,落葉層や腐朽した倒木,樹木の幹などから陸産貝類の採集を行い,各島の共通種をもとに動物相の類似度を野村シンプソン指数によって算出し,群平均法を用いてデンドログラムを作成し,各島の動物相の類似度を比較した。また,島の面積と種数の関係についても考察を行った。調査の結果,陸産貝類について,口之島26種,中之島26種,平島11種,諏訪之瀬島11種,悪石島23種,小宝島6種,宝島11種,全島では13科32属44種を確認した。新記録種が増えたため,口之島は中之島,平島,諏訪之瀬島,悪石島と動物相の類似度が高くなり,屋久島,口永良部島とは異なるグループを形成した。小宝島と宝島は奄美大島との類似度が高くなり,トカラ列島は大きく2つのグループに分かれ,動物相の境界線は悪石島と小宝島の間にあるという結果となった。島の面積と種数の関係はS=1.0112A
0.2689で表され,統計的に有意な相関関係は見られなかった。(著者抄録)