抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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生後2月のウイスターラット(雄)の胸せんを取り出し,浮遊状態の胸せん細胞にX線(200kVp,20mA,350R/min)を1000R照射した。照射後30分~4時間にわたって培養し,細胞中のアデニンヌクレオチドの定量を行なった。照射後細胞中のATPの量は減少し,ヒポキサンチンの量が増加するが,5mMのアデニンを照射後の培養液に加えておくと放射線の効果は全くみられなくなった。しかし50μMのアデニンではATPの減少とヒポキサンチンの増加を抑制することはできなかった。
14C-アデニンと
32P-正りん酸を用いて放射線照射後のATPの合成について調べた。50μMのアデニン存在下では2時間までは直線的にATPの放射能は増加したが,それ以後は速度が鈍った。これは合成速度が減少したのではなく分解してヒポキサンチンになる速度が増したためである。5mMのアデニンが存在してもATPの合成量が増加することは無かった。また5mMのアデニンによってAMP,ADPのりん酸化が増大するということもみられなかった。照射後4時間で
14C-アデニンがアデニン,ヒポキサンチン,核酸,ATPのどの分画に移行するかを調べたところ,照射によりATPの放射能はヒポキサンチンに移ること,そして5mMのアデニンが存在するとATPのヒポキサンチンへの移行が抑制されることが分った。以上のことより,放射線による胸せん細胞中のATPの減少が,アデニンで抑制されるのは,与えたアデニンによりATPが新に合成されるからではなく,ATPのヒポキサンチンへの分解が抑制されるからであるということが明らかとなった(山元こう二)