抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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ガラスとは,液体の分子がランダムに凍結してしまった状態のことだ。「ランダムに凍結している」をガラスの定義とすれば,身の回りのものはたいていガラスと言えそうだ。ガラスは固体だろうか,液体だろうか。ガラスは粘性が極端に大きい液体に過ぎないと考える人もいる。実際,ガラスは,液体を急冷して作ることは誰もが知っていることだ。ところが,液体の粘性を測ってみると,ある温度で発散しているように見える。つまり,液体がランダムのまま本当に凍結して,液体でも結晶でもない状態があるように見えるのだ。これがガラス転移と呼ばれる現象だ。ところが,「転移」の名を冠しているのに,ガラス転移点近傍のランダムな分子配置のどこを眺めても,液体とそっくりでまったく区別がつかない。我々の眼が節穴だから見えないだけなのか。人類がより賢くなればランダムな配置の中に「秩序」を見つける日が来るのだろうか。そもそも真のガラスは本当に存在するのだろうか。こんな単純な問いに人類がいまだに何も答えることができないとは驚くべきことだ。ガラス転移が物性物理学最大の未解決問題と呼ばれて久しいが,ソフトマター物理や情報統計力学なども巻き込みながら,最近めまぐるしく発展している。本講義では,ガラス転移物理学入門と称して,液体の非平衡物理学の初歩から最新の理論までを,スピンガラスの話題を含めながら解説したい。(著者抄録)