抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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瀬戸内法の改正の背景としては,瀬戸内海の漁獲量が年ごとに減っていることがある。また,カキ養殖やノリ・ワカメ養殖のように,自然の餌・栄養分を利用する養殖が難しくなってきた。大部分の生物種(魚類,貝類,海草)の漁獲量が連動して,しかも年ごとに減っていくのは,なにか共通した原因があると考えざるを得ない。ノリやワカメでは,海水中の栄養塩濃度(無機態窒素・リン)の低下が生育不良を起こしていることがはっきりしている。窒素不足(貧栄養)は,タンパク質欠乏症(栄養失調症)を引き起こし,黒ノリは色落ちし,緑黄色になり,味も薄く商品価値もなくなってくる。大阪湾の海水に含まれる全窒素濃度は大きく低下し,20年間で約1/2になっている。このような栄養濃度の低下が,魚介類の生産性低下も起こしているのではないかと危惧されている。そこで,陸から海に入る窒素量と,瀬戸内海の漁獲量の長期的な変化を比較したところ,最近の20年間で,窒素負荷量も,海域の窒素濃度も約1/2になっている。漁獲量の増加と減少が,窒素負荷量の増加と減少に,正確に一致していることがわかった。1990年以降の播磨灘の漁獲量減少の原因として,海域の栄養塩濃度の低下が最も確からしいことが明らかとなった。また,環境再生の方向は,特定の魚種を増やすことは現実的ではなく,生態系全体の生産力を増やすことが必要であることの認識についても述べた。