抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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本特集では,機能性有機材料の分子制御とそのエレクトロニクス応用について解説する。第4章では,有機薄膜太陽電池への応用について述べる。有機薄膜太陽電池は,軽量かつフレキシブルな太陽電池の実現が可能であり,設置コストの大幅な低減が期待されている。また,脱真空かつ低エネルギー製造である塗布印刷プロセスの適用が可能であり,製造コストの低減も可能である。一方で,変換効率が低く本格的な実用化は遠いと考えられてきた。また,太陽光に対する光劣化が問題視されてきた。ここでは,有機太陽電池の変換効率の高効率化に向けて半導体材料,デバイス構造の観点からその設計指針および現在の研究状況を概説する。有機薄膜太陽電池に用いられる有機半導体は,電荷輸送性が高く発光効率が低い材料が多いのが特徴である。p型半導体(ドナー材料)としては,低分子では銅または亜鉛フタロシアニン,オリゴチオフェン誘導体が,高分子ではポリ3ヘキシルチオフェン(P3HT),ベンゾジチオフェン-チエノチオフェン共重合体(PTB7)が標準的に用いられている。近年,p型高分子の新規材料での変換効率の向上が著しく,特に長波長領域の光を吸収する狭バンドギャップポリマー,より高電圧が発現する低HOMO準位を有するポリマーの開発が進められている。n型半導体(アクセプター材料)に関しては,現状フラーレンに勝るものがないため,その誘導体の開発が精力的に進められている。デバイス構造では,太陽電池層のバルクヘテロ接合の最適化が高効率化の鍵となる。また,有機・無機ペロブスカイト太陽電池の研究開発が注目されていて,すでに変換効率が20%に達しているものもあり,溶液塗布による低コスト太陽電池の主流として注目されている。しかし,有機・無機ペロブスカイト太陽電池の性能がなぜ良いのか,計算科学を含めて物性測定の観点から解明が進められているが,まだ全貌はつかめていない。有機薄膜太陽電池の実用化には,変換効率で15%を超える材料・セルの開発が必要であり,さらにコストに応じた耐久性が求められる。しかし,シリコン太陽電池では対応できない領域での応用も検討されており,特に,IoTやトリリオンセンサ時代の到来により,配線に頼らない自立用電源としてのエネルギーハーベスティング技術として期待が大きい。