抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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近年,全国的にニホンジカ(以下,シカ)の増加による農林業被害や自然植生衰退が大きな問題となっており,被害対策が急務となっている。当面の対策は,個体数削減となるが,管理目標を見出すうえでは,シカと自然植生との関係を明らかにする必要がある。シカの行動圏が狭い伊豆地域では,採食圧により変化した植生にシカの採食が適応していると考えられ,糞の成分にその変化が反映されている可能性がある。そこで,本研究では,食物資源が最も少なくなる冬季のシカの生息密度調査と,そこで採取した糞の成分分析,および植生調査を行い,糞の成分からシカによる植生への影響が把握可能であるか検討した。生息密度は,2001~2012年度の伊豆地域の調査地25地点の生息密度調査(糞粒法)の結果から,各地点の平均値(平均累積生息密度:頭/km2・y)を求めた。次に,うち広葉樹林10地点について,下層,低木,高木層植生の繁茂量を調査し,生息密度との関係を解析した。さらに,冬季(2012年2~3月)に同25地点で落ちているシカの糞を1~11糞塊(計104糞塊)を採取した。採取した糞について,成分分析(NDF,ADF,CP,エネルギー)を常法により測定した。結果,調査地の平均累積生息密度は0.05~76.25頭/km2・yであり,高密度地域が認められた。広葉樹林10地点の調査では,平均累積生息密度が高い地点ほど,繁茂量が減少し,植生の衰退が認められた。糞の成分測定では,平均累積生息密度が高い地点ほど,糞中のNDF値およびNDF-ADF値が増加する傾向にあった。広葉樹の葉の給与により糞中のNDF-ADFの割合が低く,ササなどの下層植物の給与によりその割合が高まることが確認されており,糞の成分値から,シカの生息密度の上昇に伴って相対的に広葉樹の葉の採食割合が減少し,草本類の採食割合が増加していることが推測された。加えて,生息密度の上昇に伴い植生が衰退していたことから,糞の成分測定により,植生の衰退や生息密度の相対的な指標になる可能性が示唆された。(著者抄録)