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J-GLOBAL ID:201602246351687227   整理番号:16A0867787

宇宙ガンマ線観測による暗黒物質探査

Dark Matter Search with Cosmic Gamma-ray Observations
著者 (2件):
資料名:
巻: 71  号:ページ: 617-622  発行年: 2016年09月05日 
JST資料番号: F0221A  ISSN: 0029-0181  CODEN: NBGSA  資料種別: 逐次刊行物 (A)
記事区分: 解説  発行国: 日本 (JPN)  言語: 日本語 (JA)
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暗黒物質とは,質量を持つがそのままでは光や電波などの電磁波を一切出さない物質のことである。銀河や銀河団といった,お馴染みの天体を作り出す構造形成に必要であり,今日の宇宙のエネルギー密度の1/4以上を占めること,また素粒子物理学の標準理論を超える新粒子がその有力候補となっていることから,その正体は現代物理学・天文学の主要な課題の一つとなっている。暗黒物質の探査には,検出器と暗黒物質の散乱を直接検出する直接探査と,宇宙空間における暗黒物質の崩壊や対消滅由来の粒子を観測する間接探査,および加速器で対生成させる方法があり,相補的な役割を持つが,宇宙における暗黒物質の空間分布を知るには間接探査が必須でありその意義は大きい。暗黒物質の候補の一つに,弱い相互作用と重力相互作用しか行わずかつ質量の大きいWeakly Interacting Massive Particle(WIMP)と呼ばれる粒子があるが,暗黒物質として要請される質量や対消滅断面積が,素粒子物理学から期待される質量と断面積の領域に合致することから,最も有力な候補の一つと考えられている。仮にWIMPが暗黒物質であるなら,ビックバン直後の宇宙初期の高温プラズマ中で様々な粒子が生成・消滅する熱平衡状態からの残存粒子と考えられ,今日でも一定の断面積で対消滅を起こし,標準粒子を作り出していると期待される。質量が大きいことから,最終的にはガンマ線を作り出すと考えられ,感度の良い宇宙ガンマ線観測は,暗黒物質探査の強力な手段となる。この宇宙ガンマ線による暗黒物質探査で大きな成果を上げているのが,2008年に打上げられたフェルミ衛星搭載Large Area Telescope(LAT)検出器である。暗黒物質由来のガンマ線の観測対象は銀河団や系外背景放射など様々な物があるが,特に銀河中心は高い統計が期待できるという特徴がある。これまでLATのデータ解析により,銀河中心領域に標準的な(銀河宇宙線と星間ガス・星間光子との相互作用や,ガンマ線天体など天文学的な)プロセスでは説明のできない「ガンマ線超過」があること,そのスペクトルが数10GeV程度の質量を持ったWIMPの対消滅で説明可能なことがいくつかのグループから報告されてきた。初期の報告は標準プロセスの主成分である銀河面放射の扱いに問題が指摘されていたが,その不定性を詳細に検討した結果が最近相次いで報告され,やはりガンマ線超過が必要であることが分かってきた。一方で得られたガンマ線超過スペクトルが銀河面放射モデルに大きく依存することや未検出のガンマ線天体の影響がありうることから,結果の解釈には注意が必要である。実際,矮小楕円体銀河と呼ばれる暗黒物質に富んだ伴銀河の解析では有意なガンマ線放射はみられず,WIMPの質量として100GeV以下が95%の信頼度で棄却されている。銀河中心のガンマ線超過が暗黒物質以外の起源であったとしても,今後フェルミ衛星搭載LAT検出器による矮小楕円体銀河の観測を継続することで,質量範囲をより広く調べることができる。もしWIMPの質量が数TeV程度以下であれば,次世代の大気チェレンコフ望遠鏡計画とあわせ,今後10年内にWIMP対消滅によるガンマ線信号を検出し,暗黒物質の質量を決めることが期待される。(著者抄録)
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天文学・天体物理学一般  ,  仮説粒子とその他の素粒子 
引用文献 (36件):
  • 1) F. Zwicky: Helv. Phys. Acta 6 (1933) 110.
  • 2) F. Zwicky: Astrophys. J. 86 (1937) 217.
  • 3) V. C. Rubin and W. K. Ford: Astrophys. J. 159 (1970) 379.
  • 4) Y. Sofue and V. Rubin: Ann. Rev. Astron. Astrophys. 39 (2001) 137.
  • 5) Planck Collaboration: Astron. Astrophys. 571 (2014) 16.
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