抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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ASEAN唯一の内陸国であるラオス人民民主共和国(以下,ラオス。)は,49の民族からなり,1人当たり年間精米消費量約200kgを賄う稲作中心の自給農業を基盤とする分散型社会である。ラオス北部を含む東南アジア大陸部山地から中国西南部の山間盆地では,かつてタイ系民族を中心としたムアンと呼ばれる盆地連合国家群が展開し,現在なお国境を越えて多言語・多民族的に結びついた「タイ文化圏」と呼ばれる複合文化交流圏として広がっている。ラオスでは,山地の卓越する北部とメコン河沿いの平野を擁する中・南部で農業生態系が異なるため,両地域に固有な生業構造と民族分布がみられる。多様な生態資源を背景にした農林業は,多民族環境下の在来知と文化的複合を反映しており,農村の現代社会における変容の面でも,地域独特の局面を呈している。本稿では,ラオス農村の変容が,これまで家族農業に支えられた自給的な生活基盤から商品化と換金作物への転換過程である「換金作物移行期」を中心に論じられてきたのに対し,箕曲(2014,2015)の指摘するコーヒーの売却益によって主食米を購入するという「換金作物移行後」に転換した農村が早くから存在していたことに注目し,外国からの影響を受け急速に変化する農村とラオス農業の優位性は,生態資源と文化の多様性に支えられた家族農業として自立する個性を持った各農家であるとラオスの農業・農村開発への可能性を示した。(著者抄録)