抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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最強磁石を見つけるには,大きい飽和磁化J
sをもち,高いキュリー点T
cをもち,そして,大きい異方性磁界H
a*をもつ,強磁性物質を合成しなくてはならない(p.37の囲み記事参照).そのような3拍子そろった物質は,希土類元素(Rと略する)と遷移元素(Tと略する:T=Fe,Co)とのR-T強磁性金属間化合物により実現される.最初に入った会社から公認された研究テーマである,かつて世界最強の磁石であったSm
2Co
17磁石の機械的強度改良の仕事が終わったあと,非公認テーマの思考実験を繰返し,土曜日と日曜日に確認のために試料を作製して評価していった.非公認テーマは,次に各種RのR-Fe-B合金の研究に移り,Rとして入手しやすい軽希土類を中心に研究を進めていった.そして,1978年の終わりころまでにNd-Fe-B合金のなかに,新磁石材料になる可能性がある,有望な強磁性化合物が含まれていることを突き止めた.今振返ると,このとき新強磁性化合物Nd
2Fe
14Bに到達していたことになる.Nd-Fe-B合金の研究を続けるために,住友特殊金属に移って2ヵ月後の1982年7月5日に,最大磁気エネルギー積が34MGOeの世界記録をもつNd-Fe-B焼結磁石が誕生した.Nd-Fe-B磁石の主相Nd
2Fe
14Bの異方性磁界H
aはSm
2Co
17のH
aより低い.このような低いH
aの強磁性化合物を母相とする磁石で高いH
cjを得ることは至難の業であるが,この磁石が世界最強磁石の地位にあるのは,微細構造の形成がきわめてうまくいっているからである.