抄録/ポイント:
抄録/ポイント
文献の概要を数百字程度の日本語でまとめたものです。
部分表示の続きは、JDreamⅢ(有料)でご覧頂けます。
J-GLOBALでは書誌(タイトル、著者名等)登載から半年以上経過後に表示されますが、医療系文献の場合はMyJ-GLOBALでのログインが必要です。
本稿では,レギュラトリー・サイエンスと政策形成に関する橋渡し部分に着目して議論した。これまでのレギュラトリー・サイエンスが「科学」の立場からのものが主であり,科学に対応する政策の部分の議論についての問題提起が必要であろうと考えたためである。レギュラトリー・サイエンスとは,「科学技術と人間との調和を実現し,人と社会に最も望ましい姿に調整し発展させる科学」,あるいは「社会生活のルール作りに根拠を与え,行政規制を支援・合理化する科学」とされる。また,ポスト・ノーマル・サイエンスの概念を図示すると,垂直方向は「意思決定にかかる関与度合い」,水平方向は「システムの不確実性」となる。外側に行くほどシステムの不確実性が増し,同時に意思決定にかかる(利害関係者の)関与度合いが上がる。つまり,科学的な裏付けだけに基づいた意思決定はできにくい状態になっていくことを示す。留意されなければならないのは,科学とは(特に純粋科学においては)基本的に,true-falseを検討するものであるのに対し,規制関連政策(regulatory affair)は基本的に「(社会や人々の)選択(Choice)」にかかる諸条件(規制)について議論するものであるという行為自体の目的の違いである。リスク論の個々の議論の背後には,膨大な科学をめぐる様々な議論がある。政策に関する議論についても,本稿でとりあげたOECDの2010年のレビューをはじめとして膨大な論考がある。これらの知見を統合しながら議論をしていくことが,今後のレギュラトリー・サイエンスの議論に必要なのではないかと考える。