抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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現在,日本の都市部では少子高齢化などを背景として,旧来の地域コミュニティが弱体化しており,新たなコミュニティの担い手を確保することがひとつの課題となっている。このため,新規に建設されたマンションへの転居などで新たに地域に流入した人をいかにして地域コミュニティに取り込むかについての取組がなされている。旧来の地域コミュニティは神社の祭りを共に担う氏子として組織化されているケースも少なくなかったが,近年は,氏子意識,氏子という概念そのものが特に新しく流入した人々に受け入れられにくい状況も生まれている。その一方で,阪神・淡路大震災発生時には諸派合わせたキリスト教の教会が中核となり地域と接点をもち組織的に活動した例がみられた。また,東日本大震災の際にもキリスト教会が組織的に活動した。キリスト教会の得意とする部分を担ってもらうことで,キリスト教会にも地域の一翼を担ってもらうことの可能性も示されている。実際にキリスト教会の中には,在日外国人居住者の支援を担っているところもあり,これからグローバル化がすすみ,在日外国人の増加が見込まれる中で,地域コミュニティにおいて,キリスト教会に期待できる部分である。キリスト教会が地域コミュニティの中で一定の役割を担うにあたり,問題となるのは,地域コミュニティに神社の祭礼の運営などの役割が強く残る場合,キリスト教と異なる宗教との間をどう調整するかである。キリスト教は一神教で,他の神を拝むこと,偶像を拝むことを禁止している。神社の祭礼などとは相容れない。総務省は在日外国人の増加という現状を踏まえ,「多文化共生」を施策として打ち出した。外国人の文化,言葉,食事その他の習慣等と日本のそれとの違いを互いに認め合い,同じ地域で共に生活していこうという施策である。日本側の文化の中には初詣,お盆なども含まれるが,これは元来神道あるいは仏教の行事であり,宗教行事ともみなせる。多文化共生とは宗教行事,宗教についてもお互いを認め合い,同じ地域で共に生活していこうという施策であるはずである。文化としての宗教については中村(中村,2014)が「薄い宗教」と「濃い宗教」という言葉を用いて説明している。日本の伝統文化と称される初詣,お盆などは「薄い宗教」とみなせる。「濃い宗教」とは篤い信仰を持つ人にとっての宗教である。日本人の大多数は薄い宗教として神道,仏教の文化を身に着けている。在日外国人が増加するということは,この薄い宗教,濃い宗教の両者を含めた宗教について,地域コミュニティの中でマネージすることが必要になるということである。本論文では,「宗教」という文化についての多文化共生について考える第一歩として,神社の祭り,地蔵盆などの宗教行事が残る地域が多く,またその行事を地域コミュニティの活性化に利用しようとしている京都市を対象とし,市内にあるキリスト教会の牧師・司祭にアンケートを行い,地域コミュニティで伝統として行われている宗教行事とどのように関わっているかを調査した。この結果を報告する。(著者抄録)