抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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有珠火山の南麓には善光寺岩屑なだれ堆積物(Zd)が多数の流れ山をなして分布する。Zdは従来,9kaから6kaに発生した有珠山外輪山の崩壊によるとされてきた。海岸の近くの岩屑なだれの流れ山に囲まれた標高約4.5mの低地においてボーリングコアを2本採取し,その層序,年代,堆積環境,植生変遷を検討した。両コアはほぼ岩相が同様で,標高+2~-6mにわたり連続的に泥炭層および有機質シルト・粘土層が見られた。AMS法による
14C年代測定の結果,最下部の有機質シルト・粘土層から20cal ka BP頃の年代が得られた。泥炭層下部には15cal ka BP頃に濁川カルデラから飛来した濁川テフラ(Ng)が,泥炭層中部には駒ヶ岳から6.6cal ka BPに飛来した駒ヶ岳gテフラ(Ko-g)が,同上部には白頭山苫小牧火山灰(B-Tm)などのテフラが認められた。コアの基底には洞爺火砕流堆積物(Toya(pfl))と同質の軽石に富む軽石質火山灰層が捉えられた。珪藻化石は,20~10cal ka BPに湖沼~沼沢湿地が継続し,10cal ka BP頃に沼沢湿地に移行し,以後0.4cal ka BPまで継続したことを示し,先行研究で明らかにされている最終氷期から完新世にかけての北海道の植生変遷と矛盾しない。花粉化石は,20~15cal ka BPに亜寒帯性針葉樹林が卓越し,15cal ka BP頃からカバノキ属が増大する移行期を挟み,10cal ka BP頃に温帯落葉広葉樹林へと推移したことを示した。以上から,2本のコアの泥炭層および有機質シルト・粘土層は,Zdの岩屑なだれで閉塞された凹地に形成された湖沼~沼沢湿地の堆積物で,岩屑なだれの発生は20cal ka BPのLGM(最終氷期最寒冷期)の頃である可能性が極めて強い。また,有珠外輪山の活動は20cal ka BPより以前に始まって山体を形成していたことになる。(著者抄録)