抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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世界自然遺産地域に指定されている知床半島には,高い生息密度のヒグマ個体群が存在していることから,ヒグマと住民生活や国立公園利用の間には多くの軋轢が生じている。そこで本研究は,人とヒグマの共存対策検討へ寄与することを目的として,この地域(特にルシャ地区)のヒグマ個体群の生物学的特性や行動特性を明らかにすることを検討した。すなわち,遺伝子試料の収集と解析(ヘアトラップ法による体毛の採取,バイオプシダート法による遺伝子試料採取,糞からの遺伝子試料採取,死亡した個体からの遺伝子試料の採取),および麻酔銃を用いた生体捕獲とGPS標識による個体追跡(麻酔銃を用いた不動化,GPS標識法を利用した行動追跡)を実施した。その結果,最大で4世代(子,母親,祖母,曾祖母)が生活しており,互いに近縁な約15頭の成獣メスとその子らが同地区を主に利用していることが明らかとなった。また,ルシャ地区で実施したヘアトラップ調査により,人前に現われないが同地区を利用している個体も多いことが分かった。このような例はオスに偏っており,メスに比べてより広い範囲を行動する成獣オスや,新天地を求めて分散する過程の亜成獣オスが市街地に近付き過ぎた結果捕獲されたものと考えられる。本研究は,多くの個体の遺伝子情報を収集することによって,地域個体群の特性や構造を遺伝子レベルで明らかにできることを示すものである。